「自分の中に毒を持て」岡本太郎著

第1章 意外な発想を持たないとあなたの価値は出ない

第2章 個性は出し方 薬になるか毒になるか

第3章 相手の中から引き出す自分 それが愛

第4章 あなたは常識人間を捨てられるか

 

すごい書籍です。そして、素晴らしい。

と書くと、

「『いいわね』というのは、つまり『どうでもいいわね』というのと同じことだ」

と、岡本太郎氏に叱られてしまいそうでちょっと怖い。。。そんな恐怖感を読み手に抱かせる著書です。

今私たちは、ウイルスの脅威にさらされながら、今まで経験したことのない状況下の中、毎日進んでいます。まずは生き抜かねばなりません。そして、さらには「覚悟」をもって生き抜くこと。

凡人の場合、目の前に迫る危機的な状況に直面して漸く「覚悟」します。一方で多くの天才と言われる人は、どのような状況にあっても常に「覚悟」して生きているんだろうな、と著書を読みながら考えます。

厳しい文章で岡本太郎氏は読み手に「覚悟」を求めてきます。

「挑戦をした上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とではまったく天地のへだたりがある。挑戦した不成功者には、再挑戦者としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままでオリてしまったやつには新しい人生などない。」

「『いまはまだ駄目だけれど、いずれ』と絶対に言わないこと。”いずれ”なんていうヤツに限って、現在の自分に責任を持っていないからだ。生きるというのは、瞬間瞬間に情熱をほとろばしらせて、現在に充実するおとだ。過去にこだわったり、未来でごまかすなんて根性では、現在を本当に生きることはない。」

「ぼくはこうしなさいとか、こうすべきだなんて言うつもりはない。”ぼくだったらこうする” と言うだけだ。それに共感する人、反発する人、それはご自由だ。」

「うまくいくとか、いかないとか、そんなことはどうでもいいんだ。結果とは関係ない。めげるような人は、自分の運命を真剣に賭けなかったからだ。自分の運命を賭ければ、必ず医師がわいてくる。もし、意思がわいてこなければ運命に対する真剣味が足りない証拠だ。」

「ほんとうに生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きることだ。」

「俗に”失敗は成功のもと”という。そんな功利的な計算ではなく、イバラの道に傷つくことが、また生きるよころびなのだ。通俗的な成功にいい気になってはならない。むしろ”成功は失敗のもと”と逆に言いたい。その方が、この人生の面白さを正確に言いあてている。」

「よく、あなたは才能があるから、岡本太郎だからやれるので、凡人にはむずかしいという人がいる。そんなことはウソだ。やろうとしないから、やれないんだ。それだけのことだ。」

「激しく挑みつづけても、世の中は変わらない。しかし、世の中は変わらなくても自分自身は変わる。」

「過去によって現在があるのではない。逆に現在があって、はじめて過去があるのだ。」

「生きるーそれは本来、無目的で、非合理的だ。科学主義者には反論されるだろうが、生命力というものは盲目的な爆発であり、人間存在のほとんどと言ってよい巨大が部分は非合理である。われわれはこの世になぜ生まれてきて、生きつづけるのか、それ自体を知らない。存在全体、肉体も精神も強烈な混沌である。そしてわれわれの世界、環境もまた無限の迷路だ。だからこそ生きがいがあり、情熱がわく。人類はその、ほとんど盲目的な情感に賭けて、ここまで生き抜いてきたのだとぼくは思う。」

そして、

私たち人類が直面しているウイルスの脅威。このやっかいな奴らは、我々人類に対し、生命体として「生きる」だけではなく人間として強烈な生きがいをもって「輝いて生きる」ことを求めている、と私自身は考えるようにしています。

「ぼくがここで問題にしたいのは、人類全体が残るか滅びるかという漠とした遠い想定よりも、今現時点で、人間の一人ひとりはいったいほんとうに生きているだろうかということだ。ほんとうに生きがいをもって、瞬間瞬間に自分をひらいて生きているかどうか。システムのベルトコンベアーに乗せられ、己を失って、ただ惰性的に生活をつづけているというのなら、本質的に生きているとは言えない。ならば人類滅亡論をいうことも意味がないじゃないか。一人ひとりが強烈な生きがいにみちあふれ、輝いて生きていないかぎり。」

毒をもって毒を制する。ウイルスという毒に対しては、自分の中にある輝かしい「毒」でもって制するべし。