「組織(チーム)で生き残る選手 消える選手」(祥伝社新書)吉田康弘著 2014年
第1章 組織(チーム)との関係
第2章 自分の能力を知る
第3章 最強の練習法
第4章 モチベーションの維持
第5章 本番に強くなる
第6章 トラブル、スランプに強くなる
第7章 視野を広げる
第8章 セカンドキャリアと管理職
最近は昔読んだことのある本を再読しています。この本もその1冊。
著者の実体験・経験に基づく内容で、元プロサッカー選手としての、また現指導者としてのサッカー愛、情熱、鋭いデータ分析・理論、深い人間観察眼、そしてご本人の人柄が読み手に伝わってきます。更にサッカーらしい「地に足がついている感」も体感できる本でもあると思います。
著書の「はじめに」からの抜粋。読んですぐに著者が描こうとする世界へと引き込まれていきます。
ひとつのパスを通す時も「メッセージを込めなさい」とも言います。パス自体にどんな意味を込めて味方にボールを送っているか、ということです。ボールを蹴って届いたボールをパスとは言わないのです。
昨今、「空気を読む」という言葉が、良い意味でも悪い意味でも使われますが、サッカーというチームスポーツでは、空気を読むことは非常に大切です。空気を読むとは、状況判断を的確にすること。自分がドリブルをしたいからするのではなく、チームにとって今、自分は何をすべきかを常に最優先することです。
組織(チーム)で生き残る選手と、そうでない選手。その命運を分けることになる理由や根拠を具体的・論理的に説明できること。そして状況応じて適切に気づかせ、導いていくこと。それが組織(チーム)が勝つ上で大切なこと。著書にはそのためのエッセンスが沢山書かれています。
例えば、
・「なぜ、いまそのパスを出したのか」「なぜ、今ドリブルをしたのか」「なぜ、今そこへ動いたのか」という意図です。意図あるプレートは、試合展開のなかで、なぜ、そのプレーを選択したかを説明できることです。
・いい選手は、俯瞰(鳥の目)で試合全体を見ています。今いる自分の場所やピッチ全体の状況を踏まえて、次の行動をとります。そして同時に、その局面を打開する策も考えています。この時、大事なことは、局面の打開がすべてではいけないということ。相手ゴールへボールを運ぶための最善策を考えなければなりません。
・私が意識したのは、自分が目立つことを最優先にしないこと。あくまで監督目線で、「この選手がいたほうがチームはもっと機能するだろう」と思ってもらえるプレーを心がけました。
・ファインプレーに見えるプレーのいくつかは、単に準備が悪いだけなのです。ファインプレーをファインプレーに見せないのがプロの技です。
・指導者は「待つ」というコーチングによって、選手がうまくいかなくなった時、自分で考える習慣を身につけさせるべきです。そして、指導者は、選手の前にせっかく現れた壁をその場しのぎで取り除くのではなく、選手自ら考えて、壁を乗り越えようとする状況を作ることが大切です。
・自分が今、何をすればチームが勝利へ近づけるかをいつも考えながらプレーできることが、「伸びる選手」の必要不可欠な要素です。
などなど。
会社組織の経営にもあてはまります。組織(チーム)で生き残る社員が多ければ、会社組織の存続も安定かつ強固なものになります。『自分がドリブルをしたいからするのではなく、チームにとって今、自分は何をすべきかを常に最優先』できる「空気が読める」社員を育成していくこと。社員同士でも意味を込めたパスが出せる組織、そして、経営者と社員間でも同様のキャッチボールができる組織。その理想的な組織を思い描きながら、引き続き意識を高め行動していきます。