感性は、あとから育つ

前回のブログでは、小学校5年生の担任の先生との出会いについて書きました。

たった一度見たダンクシュート。

その一瞬の出来事が、その後何十年も私の人生に影響を与えるとは、当時は思いもしませんでした。

そしてもう一つ、今の自分につながる大切な出会いがあります。

それは、一本の映画です。


父親と映画館へ

当時、大阪・梅田にあった「大毎地下劇場」で時々映画を観ました。

今でも何となくですが、その映画館の雰囲気は覚えています。

ある日、父と一緒に二本立ての映画を観ました。

一本は『未知との遭遇』。もう一本が『ブレードランナー』。

『未知との遭遇』は不思議な映画でしたが、面白く感じました。

一方、『ブレードランナー』は違いました。ストーリーも難しくてよく理解できない映画、という感想でした。


分からなかった。でも忘れられなかった。

内容やメッセージはよく分からなかったのに、40年以上経った今でもあの頃のまま、記憶に残り続けている『ブレードランナー』的な風景があります。

夜の巨大な高層ビル群。

ビルの屋上から勢いよく噴き上がる炎。

どこまでも続くネオン。

冷たく感じた未来都市。

降り続く雨。

いろんな国の言葉が飛び交う街。

それまで見たことのない未来都市が、そこにありました。

当時の私は、映画の内容はよく分からなかったれど、その映像から伝わってくる空気のようなものに圧倒されていたのかもしれません。


東京という街

初めて観てから数年後、もう一度『ブレードランナー』を観ました。

そしてまた観ました。

10回?

15回?

いや、それ以上かな?

確か、去年も観たと思います。

今では、自分でも何回観たのか分かりません。

高校時代、東京の大学を目指して勉強している友人がいました。その姿を見て、私も何の違和感もなく東京の大学を目指すようになりました。

当時は、とりあえず東京へ行ってみよかなという程度でした。

でも今振り返ってみると、少し違う景色が見えてきます。

私が見ていたのは東京という街ではなく、『ブレードランナー』が描いた未来都市だったのかもしれない、と思うことがあります。

もちろん、本当にそうだったのかは分かりません。でも、そう考えると、いろいろなことが一本の線でつながってくるのです。


恵比寿ガーデンプレイス

時々恵比寿ガーデンプレイスの展望スペースから東京の夜景を眺めています。

食事を楽しむこともできて、思い立った時に立ち寄れる、私の好きな場所の一つです。

東京には夜景の美しい場所がたくさんあります。

でも、私にはあそこがちょうどいい。

そこから見下ろす東京の夜景を眺めるたびに、『ブレードランナー』の映像が重なります。

もしかすると私は、あの世界観に浸りたくなったとき、恵比寿ガーデンプレイスへ向かうのかも、と思うこともあります。

1982年に日本公開された『ブレードランナー』が描いた2019年のロス。

実際には、その年代も過ぎました。

それでも私の中では、『ブレードランナー』が描いた未来都市は、今でも未来のままであり続けています。


もし一日だけ行けるなら

もし一日だけ『ブレードランナー』の世界へ行けるなら、という夢のような妄想をすることがあります。

あの屋台でうどんを食べながら、雨に濡れたネオンを眺め、行き交うさまざまな国の人たちを眺めてみたい。会話を聞いてみたい。

あの街の風や雨、においや空気を感じてみたい。

そして、何もせずぼんやりと、その街の時間を過ごしてみたい。


おわりに

人生には、その時には意味が分からない出会いがあります。

当時の私は、『ブレードランナー』の魅力を理解できませんでした。

ストーリーも難しく、「よく分からない映画」というのが正直な感想でした。

それでも、大人になっていなかった私の心は、何かを感じ取っていたのでしょう。

昔から変わらず好きなものがあります。

都会。

音楽。

夜景。

そして、人や文化が交わる街。

人生を振り返ると、変わったものだけではなく、変わらなかったものも見えてきます。

もしかすると、それこそが自分らしさなのかもしれません。

一本の映画が人生を変えることはないのかもしれません。

でも、その映画によって育まれた感性が、その後の人生を少しずつ形づくっていくことはありそうです。

56歳になった今、人生を振り返ると、あの頃は別々だった出来事が、一本の線でつながって見えてきます。

そう考えると、人生は本当に不思議です。

その不思議な感じにワクワクしてきます。


次回は、東京で浪人生活を送っていた頃のことを書いてみようと思います。

予備校の寮で知り合った友人から借りた一本のカセットテープ。

そこから流れてきた一曲が、その後40年以上続く私の音楽との付き合い方を決めることになるとは、その時は思いもしませんでした。


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