「漂巽紀畧(ひょうそんきりゃく) 全現代語訳」(ジョン万次郎・河田小龍(著),
ジョン万次郎。
小さい頃、子供向けマンガ本で読んだ記憶はありますが、詳しくは覚えておらず、「ジョン万次郎 ⇒ なんだかワクワク感」という図式だけが頭に残っている感じでした。
1841年、土佐の漁師5人で漁に出る。
嵐に襲われ太平洋上の無人島に漂着。
無人島で過酷なサバイバル生活を約150日間送る。
アメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号に助けられそのままハワイへ。
ハワイからアメリカ本土へ。
英語・数学・測量・航海術・造船技術などを学び、首席で学校卒業。
ゴールドラッシュの流れに乗って、ひと稼ぎ。
稼いだお金を帰国資金にして日本に向かう。
1851年琉球に上陸し、1853年に故郷の土佐へ。
ペリー来航によってアメリカの情報を必要としていた幕府の直参となる。
日米修好通商条約の批准書交換のためにアメリカに向かう「咸臨丸」に乗船。
普仏戦争視察団としてヨーロッパへ派遣。
帰国後病に倒れた後は静かに暮らし、1898年に71歳で生涯を終える。
「漂巽紀畧」はジョン万次郎や仲間たちが辿ってきたドラマティックな人生を彼ら自身が語り、それを学者だった河田小龍が密着取材して書き上げた絵図入りのノンフィクション記録。その現代語訳とあって読み易く、当時の状況、時代背景、出会い別れていく人たちのことが手に取るように伝わってきます。
生涯かけて異例の出世街道を走り続けてきたジョン万次郎が持っていたものは「運」だけではなく、「運」を手繰り寄せていく力。好奇心、覚悟、判断力、思考力。人に愛されるキャラクターと人への優しさ。
ジョン万次郎が今の時代に生まれていたらどのような活躍をしていたんだろう?と想像してみる。それは、今も昔も、常に激動にある時代を生き抜いていく上で必要とされる普遍的な力を確認することでもあると思います。
「漂巽紀畧」を読みながら目に浮かんでくるのは、人懐っこく人を惹きつけるようなジョン万次郎の笑顔。ネットでジョン万次郎の顔写真・似顔絵を調べてみても、微笑んでいるような写真は見あたりませんでした。ので、実際にジョン万次郎が笑顔で人を魅了していたのか分かりません。が、「漂巽紀畧」を読み終えた今も、和やかな気持ちの余韻が私の心の中にあり続けているのは確かです。
いいね、ジョン万次郎。