「視点という教養」(深井龍之介・野村高文著)

「視点と言う教養」(イースト・プレス)(深井龍之介・野村高文著)

1:リベラルアーツの力を考える

2:物理学~「直感」を身につけて、判断力を手に入れろ/北川拓也

3:文化人類学~感染症も経済も、世の中はすべて文化人類学の研究対象になる/飯島秀治

4:仏教学~実はきわめて論理的な、仏教の世界へようこそ/松波龍源

5:歴史学~歴史を学ぶことで「つっこみ力」を磨け/本郷和人

6:宗教学~キリスト経が、世界を変えた理由/橋爪大三郎

7:教育学~現代に再び現れた「松下村塾」の実践/鈴木寛

8:脳科学~感情の仕組みを脳から読み解く/乾敏郎

現代は「個人が生き方を主体的に選ばなければならない、史上初めての時代」。

デジタルツールやネットを通じ、様々な情報が行き交い、多様な価値観を持つ様々な人たちが交差していく、人類史上においても前代未聞の時代。そのような時代においては、1つの側面からではなく、あらゆる側面から物事を眺め、自分の考え方を整理していくことが求められる。そのためにも視点を多く持つこと。

「視点が増えると人生のオプションが増え、オプションが増えると決断ができる。決断ができると迷いがなくなり、現代の混乱から抜け出せる」

「現代は、いろんな視点でものごとを考えられる、自由な時代です。だから、『あなたの考えはわかるけど、僕の考えはこうだ』と言えることが大切になってくる」

本書は、代表的な7つの視点からの切り口で、物事を多角的に見るためのヒントを与えてくれる。物理学、文化人類学、仏教学、歴史学、宗教学、教育学、脳科学。これらは1つ1つ独立しているものではなく、各々の視点が掛け合わさり、視点が無限に広がっていく。また、これら7つの視点は、人類が数千年かけて蓄積してきた代表的なものに過ぎず、ごく一部に過ぎないということ。これら以外の視点も無限に存在し、全てが掛け合わされば、視点も無限×無限で広がっていくことになる。

その無限の可能性は分かりつつ、逆に自分自身という制約された条件下における限界を思うところでもあり、本書を読み進めていくうちに、自分の守備範囲の狭さを否が応でも認識させられていきました。

しかし、、、本書の最後にあった著者同士の会話に救われた感じがしました。

「その話を聞いて、大学生のときに学区の図書館で味わった体験を思い出しました。図書館に行くと、膨大な数の本がずらーっと並んでいるじゃないですか。そのときにふと、『自分はここにある本に書かれていることの、数パーセントも理解することなく死んでいくだろうな』と思って、寂しい気持ちになったんです。」

「確かに学べば学ぶほど、わからないことは増えていきます。でも、何も知らなかった時よりも少し前に進んでいて、世界の見方は確実に変わっているはずです。」

「この本で7つの分野にふれたことで、「じゃあ〇〇はどうなのかな?」と他の分野が思い浮かんだかもしれません。そうしたら、次はそれをご自身で探究してください。そうやっていくうちに、一生が終わるんでしょうけどね。」

「ええ、でもそれは、何より楽しい人生ですよね。」

図書館の膨大な数の本に圧倒され、知の限界に諦めるのではなく、まずは1冊手に取って読んでみる。そして、2冊目、3冊目、、、そうやっているうちに視点が広がっていくことの楽しさに没頭し、一生かかっても読み切れない膨大な数の本のことは忘れてしまっているだろうと思います。それが学び続けていくことの楽しさ。